ICS JOURNAL

コロナ禍で生まれるデザイン ー2020年を振り返るー

2020.12.18

2020年も残すところあと僅かとなりましたね。今年はコロナウイルスが様々なところで影響し、本校でも休校を余儀なくされました。学校再開後もリモート授業を実施していた為、学生達にとってこの1年の学校生活は本当にあっという間だったと思います。デザイン業界でもコロナによる影響は大きく、毎年4月にミラノで開催される世界最大規模のデザインの祭典「ミラノサローネ国際家具見本市」の延期が発表され、祭典や展覧会を含め多くのイベントが中止・延期となってしまいました。ですが、そんなコロナ禍だからこそ生まれたデザインも多くあります。

新たなデザインの発想

画像出典:https://www.itoki.jp/products/chair/vertebra03/
今年はオンラインイベントにて発表されたグッドデザイン賞では「交感」をテーマにウィズコロナで働き方や暮らし方が大きく変化する人々のスタイルに合わせた作品が多く受賞されました。「vertebra03」はワークスタイルや空間に合わせて自由に選べる個性豊かなワークチェア。

画像出典:https://vertebra.jp/journal/220/

機能やデザインだけではなく、 それぞれのスタイルに合わせて自由にカスタマイズできる拡張性の高さにもあります。マットな質感にこだわって仕上げた4種のボディカラーに、シーンに合わせて選べる脚は3タイプ。ファブリックは“vertebra03”のために製作したオリジナルタイプや、北米最大のテキスタイルサプライヤーであり、そのクオリティで世界的な定評を誇る「Knoll Textiles」のハイグレードタイプまで、表情と質感の異なる全28種類をラインナップ。 “vertebra03”で毎日の「働く」と「暮らす」をもっと楽しく。使い手のセンスで選べるワークチェアです。

画像出典:https://vertebra.jp/journal/201/

ワーケーションという働き方

ワークスタイルも大きく変化しつつある中で、それに伴う建築にも新たなデザインが生まれています。
ICSの講師でもある田辺雄之先生の作品”WORK x ation Site KARUIZAWA”は近年多くの企業が導入しているリゾート地などの休暇先で、リモートワークをするワーケーションをメインとしたオフィス。

画像出典:https://yuji-tanabe.com/work-x-ation-karuizawa/

WORK x ation Site軽井沢は長野県軽井沢のラウンドアバウト(六本辻)に面する建物のリノベーションとフォリーの増築プロジェクト。飲食店だった建物をフレキシブルなワークスタイルに対応するワーケーションオフィスへリノベーションし、緑豊かな木々に囲まれた敷地の中に、休憩スペースとして屋根や庇や壁を兼ねた角度が異なる6枚のサーフェイスのフォリーを増築されています。このフォリーを通りからも見える位置に配置することにより、軽井沢という厳しい景観規制のなかで、生まれ変わった施設の「何も書かないビルボード」としての役割も果たし、企業に対しての短中長期の1棟貸しや部屋貸し、それらの利用が無い時の個人貸し利用を想定する中で、多様なニーズに応えると共に、自分の居場所を見つけられるような空間づくりになっています。

画像出典:https://yuji-tanabe.com/work-x-ation-karuizawa/

画像出典:https://yuji-tanabe.com/work-x-ation-karuizawa/

ユーモアとソーシャルディスタンス

新型コロナウイルスの流行下、withコロナ・ニューノーマル時代に必須の社会通念となった「ソーシャルディスタンス」を楽しく保ち、守るためのサイネージ〈SOCIAL HARMONY〉。考案・制作したのはデザイン事務所「NOSIGNER(ノザイナー)」の代表を務める太刀川英輔さん。サイネージは横浜市内にて期間限定で設置されています。
〈SOCIAL HARMONY〉は、パンデミックから命を守るためにと太刀川さんが今春立ち上げた、共同編集ウェブサイト「PANDAID」のプロジェクトの一環として開発。初披露は、東京・表参道で11月3日(火・祝)まで開催された「DESIGNART TOKYO 2020」の合同展示会「DESIGNART GALLERY」にて。会場エントランスまわり、入場受付前の列を誘導すサインとして使用されました。

画像出典:https://nosigner.com/social-harmony

〈SOCIAL HARMONY〉は、床に描かれた大きな楽譜上の音符の上に立つと、その音階の音が鳴ります。列に並ぶ人が全員、音符の上に立つことで、自然と楽しくソーシャルディスタンスを保つことができる為、ソーシャルディスタンスを取るという行為が、社会的な規制ではなく、前向きに取り組める楽しい日常の演出に変わります。音符は踏んだ瞬間に反応するので、音が鳴るタイミングはその都度変わり、その場・その人たちによってしか演奏されない一期一会の音楽が空間を彩ります。

画像出典:https://nosigner.com/social-harmony
横浜みなとみらいホール(設置期間:2020年10月27日〜12月31日)

最近ではコロナの影響で人の移動が制限され、「自粛」というネガティブな印象がある中、”より過ごしやすくする”空間づくりに焦点をあてたアイデア雑貨なんかが販売されていたり、ワークの急増で今まで以上に身近になった生活空間でも快適に働く為の家具やインテリアなど、今の難しい状況だからこそ、順応できるデザインや求められるデザインが増えてきています。こうして活かされているデザインが今後の設計やプランに繋がると思うので、注目してみてくださいね!