ICS JOURNAL

特別講義 -工藤 和美先生-

2014.11.11

10月9日の特別講義は、シーラカンスK&H共同主宰、東洋大学理工学部建築学科教授の工藤 和美(くどう・かずみ)先生に、お越しいただきました。

講義内容は、先生が最近手掛けられた、6000個の穴からなる「金沢海みらい図書館」や、南京玉すだれ構造の「山鹿(やまが)市立山鹿小学校」についてです。同じ公共施設でも、静(図書館)と動(小学校)の対極にある2つの建築について、お話くださいました。

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先生は、地方での仕事が多いため、都市と地方のギャップをしっかりと認識し、気候風土や文化に対して、どう答えていくかをいつも考え設計を行なうこと。また、建築からインテリアの細部に至るまで徹底的に、自分たちで設計することにこだわりを持たれています。

「金沢海みらい図書館」
パンチングウォールと呼ばれる壁に空けられた6000個の穴(窓)から、自然の光を取り入れ、まるで外にいるかのような空間です。

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設計するにあたり、建物の形、窓、温度、光などについて、多くのスタディをされています。
はじめから、光に満ちた空間を意識されていて、そのような空間を演出するための実験・検証を何度も行なったとのことです。

▼建物の形を模型により検討。

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先生は「設計者はアイデアを求められ、考えた結果アイデアを発想できるかが重要。また、建設に関わる人たちが、イメージを共有できるような表現をすることも大切で、その共有イメージが最後まで心をつないでいく」と、おっしゃっていました。
「金沢海みらい図書館」では、箱を開けると素敵な空間が入っているというイメージを「ケーキの箱」と表現しています。さまざまな形をスタディしていく中、「ケーキの箱」の発想に至り、四角い箱型の建物に決まったとのことです。

▼模型による開口部のスタディ。

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▼実寸大の模型による検証。

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▼上記の検証から、まっすぐに穴をあけると、光がきれいに入ってこないことがわかり、穴の縁(ふち)を丸めることにして、再検討。

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▼縁を丸めた実寸大模型。

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▼スクリーンに投影し、全体的な穴の配列を検証。

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パンチングウォールは、GRC(ガラス繊維補強セメント)の外壁と構造の鉄骨、内部の鉄板仕上げで構成されています。
構造は、筋違い(すじかい)により建物の変形に対応する「鉄骨ブレース構造」です。
見た時に、構造の鉄骨が感じられないよう、パンチングウォールの穴の配列が考えられています。

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▼鉄骨だけ見えている状態。

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▼仕上げをすることによって、構造が見えなくなっていきます。

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パンチングウォールは、3種類の大きさの穴をランダムに配列したパターンをつくり、そのパターンの繰り返している構成です。パターンを繰り返していることがわからないように配慮されています。

▼児童図書スペース。フラワー型の照明は、工藤先生の事務所で制作した、既製品を組み合わせた照明です。

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「山鹿市立山鹿小学校」
工藤先生は、人の行動についてなど、人に関わるアクティブな空間のお仕事を多く手掛けられています。その最新作が「山鹿小学校」です。

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先生は最近、ローカリティ(地域性・田舎らしさ)を持っていることの力を強く感じていて、「幸せなローカリティ」を実現したいという想いから、「学びの原っぱ」と「学びの街道」が作り出す「幸せなローカリティ」をテーマにされています。

上記の「金沢海みらい図書館」のデザインスタディと同様に、教師とのワークショップやヒアリングを行ない、デザインを固めていきます。その際に重要なのは、模型やスケッチを用いること。目に見える物があることで、さまざまな具体的な意見がでてきて、多くのヒントを得ることができるとのことです。

▼教師と話をしながらスタディを進め、最終的な形となった全体模型。

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通学路、または、地域の人が通る道である「学びの街道」。地域の人が利用しやすいように、「学びの街道」沿いに、体育館、図書館、音楽ホールなどが配置されています。

▼全体計画図。

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「学びの原っぱ」は、2つの校舎の間にある学習空間としての中庭です。「学びの原っぱ」を介して、各学年の教室が向かい合っている構成。一般的な学校の中庭と異なるのは、静かな教室と騒がしい中庭をつなぐ、多目的スペースが設けられていることです。

▼「学びの原っぱ」周辺の平面図。

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▼「学びの原っぱ」の様子。

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みなさんは、「南京玉すだれ」って、ご存じですか?
竹製のすだれを、釣竿や橋などの形に見立てて操る大道芸のことです。
すだれが伸びたような形の構造を開発し、木造で大空間をつくりだしています。

▼9種類の構造システムで建設。

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この構造は初めての試みのため、何社もの職人の代表が集まり、建て方の練習を実施。練習をしたことで、大工さんたちは安心して工事に入れたとのことです。
また、「設計者の意図していることが現場に伝わる、また、全員がこだわりを持って作業してくれる空気をつくることが大切で、それは設計者の役割。ただ図面を描いていればいいのではなく、現場に何度も行くことで、そのような空気を生み出すことができる」と、おっしゃっていました。

▼建て方の練習風景。

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▼完成した多目的スペース。

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山鹿小学校は、お盆に行なわれる千人灯籠(せんにんとうろう)おどりのメイン会場となっていて、このことを学校が背負っている条件と捉え、「学びの街道」を設計。「学びの街道」に千人が並ぶことができ、グラウンドに向かえるようになっています。

▼イベント時の様子。

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先生が設計される学校には、「表現の舞台」と呼んでいる、多目的な階段状の教室が多く見られます。座った時に怖くなく、前の人の頭が邪魔にならない勾配など、さまざまなことを考え設計。生徒や教師、保護者に評判が良いとのことです。

▼表現の舞台。

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▼音についても、細かく検証されています。

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「木は、音を拡散はするけど吸音はしない。今後、木造や木を使ったインテリアをデザインする時には、音のことを考えてもらいたい」と、アドバイスしてくださいました。

工藤先生、設計プロセスや建設時の出来事など、貴重なお話をありがとうございました。
何度もスタディを重ねることの大切さや、現場への配慮など、学生にとって多くのことが学べたことと思います。

▼工藤先生の作品事例は、コチラをご覧ください。
「シーラカンスK&H ホームページ」

http://www.coelacanth-kandh.co.jp/topics.html