インテリアアーキテクチュア&デザイン科

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高齢化社会に向けたインテリアデザインの提案

インテリアデザイン科の2年生は、後期授業より実践的なインテリアデザインを学習することを目標に、様々な業界や企業の皆様に課題を提供して頂き、産学協同課題を実施しています。今回ご紹介する「ZENKOUKAI Project」では、社会福祉法人善光会の皆様をクライアントとしてお迎えし「福祉とインテリアデザイン」をテーマに2012年度より課題を提供頂いています。前年度までの実施課題の中でも、難しいテーマにも関わらず学生ならではのフレッシュな提案が多数生まれてきました。果たして今年はどのような提案が生まれてきたのか、最終講評会の様子と合わせてレポートして行きたいと思います。

▼課題説明の様子
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今年度もデザイン課題の対象空間として、複合福祉施設サンタフェガーデンヒルズをご提供頂きました。課題を始めるにあたっては、施設の見学会なども現地で行い、最終講評会についても施設の一階にあるエントランスホールで作品の発表を行う形をとりました。

▼プレゼンテーション会場の様子
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プレゼンテーションはスクリーンにスライドショーを映しながら行います。また、模型やプレゼンテーションボードも、大事な発表ツールとなります。

▼クライアントからコメントを頂く学生達
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講評は善光会の担当スタッフの方々から直接頂くことが出来ました。5週間を掛けた力作について、現場で働く皆さんの視点から、様々な貴重な意見を頂戴することができました。

そんな力作の中から、今回は6つの作品を紹介させて頂きます。まずは空間系課題(グループホーム)からの3作品です。空間系課題では、特別養護老人ホームのユニット単位となる「グループホーム」を、集合住居としてデザインすることが求められました。

▼cellwall(Designed by Yusuke Sasaki)
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佐々木さんの作品は、回遊性を生み出す住居ユニットが特徴的です。有機的な形は使い方を限定させず、このような飽きのこないデザインが長い時間を過ごす高齢者施設のような空間では大切であると説明してくれました。また、床(漆喰)、壁(木材)といった、自然素材を中心に用い、五感を刺激するインテリア空間になっています。このようなインテリアデザインの考え方がそのまま安全性につながっていること、また素材から照明計画まで高齢者に向けたインテリアデザインを細部に渡って考えていることに高い評価を頂きました。

▼曖昧な場で過ごす人生のひととき(Designed by Koichi Nakazawa)
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仲澤さんが提案してくれたグループホームは、これまでの施設のように整理された空間ではなく、バラバラの空間になっており、沢山の間を生み出していることに特徴があります。そのような曖昧な場を沢山作ることで施設での過ごし方は一つではなくなり、結果的に生活を豊かにすると説明してくれました。さらに、トイレを居室内に設置しないことで、共有スペースに動きが生まれることを意図したようです。インテリアの色彩計画においてもカラフルな壁を設けることで、楽しい空間になっていると同時に、認知症の方への配慮がなされてます。クライアントの方からはこれまでのセオリーにはない空間構成が新鮮であり、意欲的に取り組んだ配置計画を高く評価しているとのコメントを頂きました。

▼まちにすむ(Designed by Yuta Bamba)
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番場さんは作品の中で、グループホームを町にすることにチャレンジしました。ストライプ状のゾーニングは公共空間(カフェ、図書館など)、プライベート空間(住居)、公園空間と変化に富んだものとなっていて、とても楽しそうな空間が模型からも想像することができました。また、開口部の素材にはガラスブロックを使用していて、路地のような公園空間が柔らかくなることを意図したようです。施設の中で色々なことが楽しめる可能性があることを高く評価され、さらに床が色や素材でゾーニングされていることが分かりやすく、入所者には使いやすい空間であるとのコメントを頂きました。

次に道具系課題(高齢者向け家具)からの3作品です。道具系課題では、施設内で使うことを前提とした、高齢者向けの家具プロダクトを開発し、デザインすることが求められました。

▼Cat's Whisker Light(Designed by Hiromasa Kawazuru)
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川水流さんは施設内で行われるワークショップを通じて、入所者自身が作る照明器具の提案を行いました。デザインは「ネコノヒゲ」をモチーフにしており、4色のLEDライトでグループホームのゾーンを識別することを試みています。また照明により現れる天井への光と影の映り込みが、空間を華やかにしてくれます。このようなストーリー性の高い作品であることと、入所者参加型プログラムの提案性に高い評価を頂きました。

▼Friendly Folding Flooring(Designed by Xi Chen)
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陳さんの作品は、車いすにフローリングを加えるという考え方がベースにあるとのことです。具体的には、車いすに折りたたみ式のテーブルを組み込む提案になっていて、車いすの種類に合わせて固定用のパーツを変えるなどの工夫もされています。陳さんはこの課題の為に2週間に渡り車いすでの生活を体験し、デザイン展開の参考にしたとのこと。その努力もさることながら、動画や実演を交えた分かりやすいプレゼンテーションも高い評価を受けました。また、車いすの前にテーブルがあることでの利便性、安全性も考えられていて、ユニバーサルデザインの観点からもとても良く考えられています。

▼L HOME(Designed by Sin ling Low)
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劉さんはグループホームの中の共用空間となる、キッチン、ダイニング、そしてそこで使われる家具をインテリアデザインとして提案してくれました。入所者の目線を意識して考えた、曲線的な天板を持つテーブルや、食事を用意するところから参加するコミュニケーションを誘発するキッチンなど、複数で利用することを意識した、楽しい生活シーンを生み出すインテリアデザインとなっています。また、天井の形を有機的にすることで、一日の中での変化を外の風景とともに感じ取ることもできます。そして通常の老人施設では使われない、大理石などの素材が使われていることも含め、新しさに満ち溢れた作品であることに高い評価を頂きました。

プレゼンテーション終了後にクライアントの皆様から総評を頂きました。色々な人と話し合いながら5週間の課題が進行したことが、最後のプレゼンテーションから感じられ成果の高い課題だったと感じて頂けたようです。また、実際に施設で使いたい、使わせたいと思うデザインが多く、中間発表でのクライアントの意見を上手に汲みとっている結果が、リアリティーを高めることができたのだと思います。そして学生達が初めて体験する福祉施設から受けた印象を、デザインに上手く還元してくれたので、クライアント側も大変勉強になったとのコメントも頂きました。

今回で4回目となるこの課題。これからの少子高齢化社会をデザイナーとして支えてゆくことになる学生達に対し、「福祉」という難しいテーマに取り組むことは少なからず良い経験になっているように感じています。クライアントからも勉強になったというコメントを頂けたように、これからも産学協同課題として、互いに学ぶ姿勢を忘れずに、継続的に取り組んで行ければと思います。今年も貴重な学習の機会を与えて頂いた善光会の皆様に、この場を借りて心よりお礼申し上げます。

2016年11月

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2015年12月10日 10:23に投稿されたエントリーのページです。

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